日本での転職エージェント経験後、現在はアメリカにてHR(人事)に従事しています。私の経験から、外資系企業のHRの裏側を伝えた上で、少しでも転職活動の役に立てることを祈っています。
今回の記事は、人事・候補者どちらの方にも参考になる内容です。
この記事を書いた人
1社目:メーカー / 営業経験(年収250万)
2社目:転職エージェント / コンサルタント(年収1,000万)
3社目:外資系スタートアップ / 人事(年収1,200万)
10年間の転職エージェント + 人事経験あり。全ての記事は、私の経験をもとに書いています。
私は転職エージェントで、10年間合計1万人以上を担当し、2,000名以上を転職成功に導いてきました。
履歴書で判断できない理由
なんとでも書ける
履歴書の78%は誤解を招く内容が記載されているデータがあります。21パーセントが不正な学位を記載し、33パーセントが不正確な職務内容を記載し、40パーセントが給与を誇張しています。口頭および書面による「優れたコミュニケーション能力」や「結果重視」などは、誰でも履歴書になんとでも書くことができます。履歴書は桁外れに信用できないのです。
バイアスがある
調査によると、中国、インド、パキスタン、日本などのアジア系の名前の履歴書は、欧米系の名前の履歴書に比べて、面接の候補になる可能性が28%も低いことがわかっています。
履歴書の学歴や経験の欄には確証バイアスがかかります。つまり、ハーバード大学のようなアイビーリーグの大学で学位を取得していたり、Googleのような有名企業で働いていたりすると、その履歴書を好意的に見て、間違いを見逃す可能性が高くなるのです。一方、州立学校を卒業した人や、小売業やウェイティングテーブルなどのあまり有名ではない職種に就いていた人の場合は、その逆になります。
候補者に対する無意識の思い込みは、ミスを見逃すどころか、雇用主に寛容さを失わせ、履歴書を否定的なレンズで解釈させる傾向があります。しかし、アイビーリーグの学歴や無給の有名なインターンシップは、仕事上の成功よりも社会経済的なステータスを示すものです。履歴書に基づいて候補者を絞り込むということは、可能性ではなく豊かさに基づいて候補者を選別していることになります。
そして、あなたの定義する「理想的な候補者」に当てはまらないという理由で、優秀な社員を人材獲得プロセスに進ませずに、選考プロセスに留まらせる可能性があるのです。
履歴書と活躍できるかどうかは、関連ない
1998年、SchmidtとHunterは、履歴書の主な構成要素である職務経験年数と学歴は、仕事の成果とは極めて弱い相関関係にあることを発見しました。この係数は-1.0から+1.0の範囲で、r=0.40以上であればデータ間に強い関係があることを示しています。経験と学歴の相関関係は、それぞれr=0.18とr=0.10である。
要するに、履歴書は候補者の仕事上の成功を予測するものではないということが科学的に示されているのです。
採用するのは優秀な人材ではない理由
私が日本で転職エージェントとして働いていたときには、多くの企業は『優秀な人材』を求めていました。しかし、アメリカは少し異なる印象をもちます。アメリカで最も重要なのは「フィット(相性)」です。会社とのフィット、チームとのフィットです。
アメリカは日本のようにポテンシャル採用というものは、多くありません。一つの専門性を磨き、その専門性をもって転職活動を行います。そして、異動という概念もありません。例えば、エンジニアの経験であれば、次の会社でもエンジニアでキャリアを積むことが多いです。一部の人は、エンジニアの経験を生かせる例えば、データサイエンティストなどにスライドすることもありますが、基本的に同じ筋肉を使うような仕事へ転職をします。
どんなに優秀な人でも毎日一緒に働くメンバーで、相性があわなければとてもつらいですね。そのため、採用で最も重要なのは『会社・チームとのフィット感』なのです。
採用すべき人材の見極め方
1998年、フランク・シュミットとジョン・ハンターは、アセスメントが(仕事)パフォーマンスをどの程度予測するかについて、85年にわたる研究のメタアナリシスを発表しました。19種類の評価手法を調べた結果、典型的な構造化されていない面接は、採用後のパフォーマンスを予測する上でかなり不利であることがわかりました。
仕事の成果を予測するのに最も適しているのは、ワークサンプルテスト(29%)です。これは、候補者に実際の仕事に近いサンプルワークを与え、そのパフォーマンスを評価するというものです。たとえば、営業職の募集であれば、「販売すべき商品をどのように営業するか」「どういう販路に営業するか」などサンプルワークを面接でプレゼンテーションしてもらうといった内容です。
2番目にパフォーマンスを予測できるのは、一般的な認知能力のテスト(26%)です。ケースインタビューや頭脳ゲームとは対照的に、これらのテストは、IQテストのように正解と不正解が定義された実際のテストです。
一般的な認知能力を測るテストと並ぶのが、構造化面接(26%)です。構造化面接では、候補者は一貫した質問を受け、回答の質を評価する明確な基準が設けられます。構造化面接には、行動的面接と状況的面接の2種類があります。行動面接では、候補者に過去の業績を説明してもらい、それを現在の仕事で求められているものと一致させます(例:「......の時のことを教えてください」)。状況判断型の面接では、仕事に関連した仮想の状況を提示します(例:「もしも......だったら、あなたはどうしますか」)。勤勉な面接官は、候補者が語るストーリーの裏にある真実性や思考プロセスを評価するために深く掘り下げていきます。
面接プロセスの目的は、候補者がチームに参加したときにどのようなパフォーマンスを発揮するかを予測することです。この目標を達成するために、科学的根拠に基づいて、行動や状況に応じた構造化面接と、認知能力、良心性、リーダーシップなどの評価を組み合わせています。